キャリアコンサルティング ―その過去、現在、未来―

第1回 新たな職業能力開発促進施策体系の整備

1 職業能力開発促進法の改正

近年の技術革新の進展、産業構造の変化、労働者意識の多様化等に伴う労働移動の増加、職業能力にミスマッチの拡大等に的確に対応し、雇用のミスマッチを解消するため、今後は、職業能力開発の重点を「労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力開発(キャリア開発)と、これに資する職業能力評価制度の整備」に置くことが大切である。 
このような基本的観点に立って、平成13年、職業能力開発の基本法である「職業能力開発促進法」が次のような観点から改正、施行された。

① 労働者の職業能力開発の開発及び向上は、経済、社会環境の変化による労働者の業務内容の変化に対する適応性を増大させ、及び円滑な再就職に資するよう労働者の職業生活設計に配慮しつつ行う。

② 必要な職業訓練等を受ける機会が確保され、必要な実務経験が行われ、これらによって習得された職業に必要な技能、知識の適正な評価を行う。

③ 事業主は、そのための情報の提供、相談その他の援助及び労働者の配置などの雇用管理について配慮する(キャリアコンサルティングを行う)。

④ 職業能力評価基準の整備、評価方法の充実に努め、技能検定制度について民間機関に委託する方法等により職業能力評価の普及を図る。

2 第7次職業能力開発基本計画の策定

このような法改正の趣旨も踏まえつつ、今後の職業能力開発の目標及び施策の基本的な考え方を明らかにし、計画的な諸施策を推進し、労働者の生活の安定と社会的な評価の向上を図るために、平成13年~17年度を計画期間とする「第7次職業能力開発基本計画」が策定された。
 その主要な項目と内容は、以下の通りである。

① 労働力需給調整機能の強化
 ハローワークの機能強化、求職者等による民間機関の利用促進、官民連携の雇用情報システム(仕事情報ネット)、民間職業紹介事業制度の周知・広報、紹介予定派遣の活用

② キャリア形成促進のための支援システムの整備
 キャリアコンサルティング技法の開発、キャリア形成に係る情報提供、相談等のための推進拠点の整備、キャリア形成支援を担う人材の育成、企業内におけるキャリア形成を推進するための情報の提供、相談、助成金の支給

③ 職業能力を適正に評価するための基準、仕組みの整備
 民間委託を活用した技能検定制度の拡充、整備、ホワイトカラーを含む適正な能力評価基準の設定、実践的な職業能力評価手法の確立

④ 能力開発に必要な多様な教育訓練機会の確保
 民間における新たな教育訓練コースの設定、大学、大学院等高度な内容の教育訓練の確保、民間における教育訓練の質の確保、政策評価を通じた公共職業訓練の効果的な実施

3 事業主が行うキャリア形成支援

平成13年9月、職業能力開発促進法の改正と同時に、キャリア形成支援のために事業主が行うべきことを指針として規定された。「労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力開発及び向上を促進するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省告示296号)
 以下、その要点を下記に説明しよう。

(1)情報の提供、相談の機会の確保、その他の援助(法第10条の3第1号関連)

① 職業能力の開発及び向上に関する目標を定めるために必要な情報の提供

② 相談の機会の確保その他の援助(キャリアコンサルティングという)の実施

③ キャリアコンサルティングを適切かつ効果的に行うための措置

(2)配置その他の雇用管理についての配慮(法第10条の3第2号関連)

① 労働者の配置等については、その労働者の職業生活設計に即した実務経験の機会の確保に配慮すること

② 必要に応じて社内公募の導入等労働者の自発性、適性及び能力を重視した的確な配置、処遇上の配慮が可能となる制度の整備を図ること

③ 職業訓練等を通じて開発、向上が図られた職業能力が充分発揮されるような職務への配置等について配慮すること

(3)休暇の付与(法第10条の4第1項第1号関連)

① 有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇その他の休暇については、労働協約、就業規則及び事業内職業能力開発計画において、対象労働者、教育訓練の範囲を明記し、労働者に周知すること

② 教育訓練を受けるための休暇のほか、職業能力検定、キャリアコンサルティングを受けるための休暇、自己啓発のためのボランティア体験等自らの能力開発を行うための休暇を与えるように配慮すること

③ 休暇の対象となる教育訓練の範囲は、労働者の希望、適性に応じた多様な選択が可能になるよう配慮すること

(4)教育訓練等を受ける時間の確保(法第10条の4第1項第2号関連)

① 労働者が希望する教育訓練の実施時間と就業時間が重複する場合等は、始業、終業時刻等の変更、時間外労働の制限等適切な措置を講ずること

② これらの措置は、労働協約、就業規則及び事業内職業能力開発計画に明記し、内容を労働者に知らせる等により、その活用を図ること

(5)その他(省略)

4 キャリアコンサルティングの定義

以上のような経緯を経て、「第7次職業能力開発基本計画」は、「キャリアコンサルティング」を下記のように定義している。
 キャリアコンサルティングとは、「労働者が、その適性や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即した職業選択や職業訓練の受講等職業能力開発を効果的に行うことができるよう、労働者の希望に応じて実施される相談その他の援助をいう」

《引用・参考文献》

木村 周「キャリアコンサルティング 理論と実際(4訂版)」 平成28年5月、(一般社団法人)雇用問題研究会

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